【書評】三宅香帆『人生を狂わす名著50』~何かを熱く語る人の面白さ~

 

人生を狂わす名著50

人生を狂わす名著50

 

 

ブックリストというのは、巷に溢れている。

例えば、パッと思いつくだけでも、
立花隆佐藤優『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』
佐藤優佐高信『世界と闘う「読書術」思想を鍛える一〇〇〇冊』
松岡正剛の千夜千冊
・山口真由『前に進むための読書論 東大主席弁護士の本棚』

又吉直樹『第2図書係補佐』
といったブックリストを、私はこれまでに読んできた。
これらの本は、いわゆる"知の巨人"と呼ばれるような方々や有名人、芸能人が書いたものだ。

一方、『人生を狂わす名著50』の著者は、無名の本好きな大学院生である。本書が、デビュー作。以下の記事がバズったことをきっかけに、書籍化に至ったそうだ。

tenro-in.com

それにもかかわらず、『人生を狂わす名著50』は、上に挙げた大御所によるブックリストに劣らず、面白い。

本のチョイスも秀逸なのだが、
それ以上に、"本を熱く語る、その語り口"がずば抜けて面白いのだ。
何かを熱く語る人、というのはそれだけで面白い。
更に言えば、"マニアックな事柄の魅力を、一般人にも伝わるように、熱く語れる人"、がめちゃくちゃ面白い、と私は思う。

例えば、「誰もが知っている有名アイドルの魅力を熱く語る人」よりも「無名な地下アイドルの魅力を熱く語る人」の方が断然面白い。

ちょっと前にSF作家・伊藤計劃のブログ(を書籍化した本)を読んだ。世間的には"クソ映画"と言われる映画『CASSHERN』について、何記事もかけて熱く語る、その熱量に圧倒された。

伊藤計劃記録 I (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃記録 I (ハヤカワ文庫JA)

 

私の友人にも、「量子コンピュータが凄い」だの「ベイズ統計がヤバい」だの、一般的には"面白くもない"と一蹴される事柄について、熱く語る変人がいるが、彼は間違いなく"面白い人間"だ。

繰り返すが、『人生を狂わす名著50』は、こういった"何かを熱く語る人の面白さ"を堪能できる一冊だ。何かを熱く語ることの面白さに、素人もクソもない、ということを私は本書から学んだ。

これまでの私は、"知の巨人"による『松岡正剛の千夜千冊』という書評サイトがあるのに、素人の私が書評ブログなど書く意味があるのか、と思っていた。けれども、好きなことを語ることに、素人も知識人も無いのだ、と私は気付かされた。


さて、冒頭で筆者は、

読書が趣味かと言われると、すこしだけ首を傾げてしまいます。毎日本を読んでいるけど、これが趣味かと言われても、ピンと来ない。趣味って、もっと楽しくて気楽なもんじゃないかなって。

ーじゃあ読書ってあなたにとって何なの? そう聞かれると、私はこう答えます。

私にとって、読書は、戦いです。

と述べる。

このフレーズに、私はすごく共感した。
私も(筆者程ではないが)本好きを公言している。一日一冊くらいのペースで本を読んでいる。つい最近、私も筆者と同様に、知人に「(私)にとって、読書は趣味なの?」と聞かれた事がある。そして私も、"趣味"というのとは、何か違うな、と思った。

私は少し考えた挙句、こう答えた。

僕にとって、読書は、食事と同じだよ。

食事は生きるために必要な行為だ。人は食物から得た栄養素で動いている。だから食事は"趣味"というよりも"義務"に近い。もちろん美味しいものを食べることは、人にとって"楽しみ"たりうる。

私にとって、読書は食事と同じだ。私にとって"読書"は生きる術、そして拠り所である。私は本から得た感動・知識・価値観のおかげで、今まで生きながらえてきた。

もちろん面白い本を読むことは、自分にとって最上の"楽しみ"である。
この本のような、面白い本、をね。