【書評】森博嗣『ジャイロモノレール』~現代社会を生き残るカギは"個人研究"にある~

私は元々、森博嗣のファンである。好きな小説を挙げろと言われれば、絶対に『すべてがFになる』と『喜嶋先生の静かな世界』の二つは入れる。『やりがいのある仕事という幻想』や『自由をつくる 自在に生きる』といったエッセイは私の人生観を形作っていると言っても良い。そんな森博嗣ファンの私だが、氏の鉄道関連の製作記・エッセイだけには手を出していなかった。

そんな中、本日の記事で、フミコフミオ氏が森博嗣著『ジャイロモノレール』を絶賛していた。

これはもう、読むしかない。そう思い、早速帰宅途中に本屋に立ち寄り、『ジャイロモノレール』を購入。2時間程で読み終わり、今に至る。

本書のコンテンツは、①ジャイロ効果の解説、②ジャイロモノレールの原理、③氏のジャイロモノレール研究の成果、④氏の趣味論、の大きく4つに分けられる。

そもそも、"ジャイロモノレール"って何なの?名前さえ聞いたこともない。という人も多いかと思う。恥ずかしながら、私もその一人だ。
言葉で説明するよりも、実物を見た方が早いと思う。以下の、一つ目の動画は森博嗣氏本人が製作された大型のジャイロモノレール、二つ目の動画が本書中でも言及されている佐藤隆一氏作の小型のジャイロモノレールである。

 

 

ジャイロモノレールとは、大雑把に言えば、独楽を積んだモノレールだ。
回転する独楽を積むことによって、車体が左右に傾いても、自動的に元に戻るように設計することができる。ここら辺の詳しい原理は、著作『ジャイロモノレール』の前半で詳しく、かつ非常に分かりやすく説明されている。ぜひ、ご参照いただきたい。

ジャイロモノレールは、"失われた100年前の技術"というキャッチコピーに表されているように、汎用的に普及した技術ではない。バベッジの解析機関(蒸気機関で作動するコンピュータ)の様なものだ。今更実現したところで役に立ちはしない。しかし、ジャイロモノレールから溢れ出る、サイバーパンク的魅力が、森博嗣氏を始めとするホビイスト達を惹きつけてやまないのだろう(と勝手に想像する)。

さて、本書の目玉は、やはり最終章の、氏の趣味論のパートだろう。
森博嗣は、「hobby」を"趣味"ではなく、"個人研究"と訳すのが適当だろうと言う。
"趣味"とは単なる受動的・無目的な楽しみだ。一方、"個人研究"とは、自ら課題を見つけ、何かしらの目的を持って、行うものである。研究には、未踏の分野を開拓するという、"趣味" では得られない楽しみ・達成感があるのだ。

私自身、大学~大学院で3年間研究をやり、今でも企業で研究者として生計を立てている。研究にはゲームのような単純な楽しさは無い。だが、新しい"何か"を掴めた瞬間というのは、なんとも言えない、独特な充実感がある。だから、(たかが4年弱ではあるが)研究はやめられない。

ブログ執筆も、私にとって研究の一種だ。思いついたアイデアを、実行(執筆)に移し、フィードバック(アクセス数や反響)を確認し、次の構想を立てる、というのは、研究と全く同じプロセスである。まだまだ駆け出しで、結果は出ていないが、この一歩ずつでも前進しているという感覚が、研究の面白さなのだ。

 

ジャイロモノレール (幻冬舎新書)

ジャイロモノレール (幻冬舎新書)